何年か前に ニューヨークで 知名人たちのパーティーがあり 参加した友人が 通訳をかってでました。
アメリカの若手の建築家が 日本の著名な建築家に
「日本は昔 川の上にトイレが有りましたね!」
と 話しかけました。
日本の建築家はあわてて「いいえ今日の日本ではすべて水洗便所になっています。」とトンチンカンな応答をしました。
アメリカの建築家は どのような意味で言ったかというと 日本に敬意を表して現在世界中で使われている 水洗便所の原点は すでに日本の古代や神話の時代に現れている。
つまり 日本人は古代から 合理的で素晴らしいですね! と言いたかったわけです。
日本の建築家の 認識不足に 通訳をかってでた友人が 嘆いていました。
フレキシブルな日本建築
西洋では本来 部屋という三次元空間は 空気すら流通することをゆるさない 絶対三次元空間です。
日本では 部屋の空間は 格子や障子・暖簾などで分けられ となりの部屋どうし 上部は 欄間で格子等とともに 空気が流通している。
障子は湿度が高くなれば 和紙が膨張し 外気を遮断し 晴れて乾燥すれば 和紙の目が広がり 外気と流通可能になる。
人間も皮膚呼吸し汗もでます。このように 障子と同じと言えます。
日本の建築は より自然にかなっていたと言えます。
西洋の部屋は 一部屋 一部屋 はっきりと 用途が決まっています。
寝室はあくまで寝室 食堂は食堂 居間は居間そして 内部空間と外部空間は しっかり三次元的に分かれています。
日本では たとえば 床の間の部屋があります。
納屋からテーブルを持ってくれば 集会室・法事室・社交室・宴会室 また食堂にもなります。
押し入れから 布団を出して 敷けば 寝室にもなります。
*一つの部屋が多様化する たいへんフレキシブルな部屋になります。
*現代建築のビルのロビーは「日本のフレキシブルな空間」を参考にしています。ロビーに売店が有り その横に噴水や木が有り ラセン階段がそなえてあり その上には喫茶店が有り 一つの空間に バラエティーに 多様な空間になっている。そして すべて空気は流通している。
国宝 源氏物語りの絵巻(平安時代の貴族たちの生活を表現)
絵を見ると 屋根と天井が無い 吹き抜けのような俯瞰図になっている。 西洋には このような発想はまったくない 日本人は建物を単純な 三次元とみなしていないということです。
三間四方の空間(18 畳)
日本では 人間にとって 三間四方の空間が 精神的に 一番フィット(心がおちつく)すると言われています。
○ 寺院建築に 三間四方の空間を基本にして建てられている。
○ 能楽堂の舞台も三間四方の空間です。
○ 伊勢神宮本殿は 三間四方の空間が 横に三つ連なったかたちです。
○ 出雲大社本殿は 三間四方の空間が 四つ漢字の田のように 合わさった形です。
*すでに 西洋の建築家たちは それらも日本人以上に調べ参考にし あたらしい現代建築に利用している。
伊勢神宮の式年遷宮
20 年ごとに 伊勢神宮は 古くなっても 新しいままでも、 壊れても壊れなくても 定期的にたて替えます。 建物そのもは異なっても 原形は正確に維持されます。 同じパターンをすぐ隣で 踏襲していくのです。
パルテノン神殿・ローマの神殿・ゴシックの教会などは 石で造られ永久に持続しています。 しかしいつかは消滅します。
伊勢神宮は壊しやすく造り 同じものを建て替える方法をとっています。
その物自体は変わっても 同じ神殿が永遠に続く方法を選んでいます。
この考え方は 現在の先端科学技術にも 暗示をあたえるもので、 コンピューター・システムに似た感覚があります。
物質それ自体よりも情報のネットワークのほうが現実的だと言うことです。
建物はきわめて機能的で 特別な装飾はなにもなく 床が高くなっているのは 湿気をふせぐためです。